映画『鹿の王』を観てきました!
感想の書き散らしです。
感想【ネタバレあり】
映画は原作の世界観を表現していると感じました。とても感動…何度も泣きそうに…。
しかし原作はじっくり話が進んでいくのに対し、映画は駆け足の印象を受けました。
短時間にギュッと凝縮しているので原作を読んでない人には分かりづらいのでは…?
それがちょっと残念でしたが、ラストシーンの感動が大きく鑑賞後は満足感を得られました。
また原作を読み返したくなりました。
世界観
映像化により生活の営みへの理解がより深まりました。
作中では支配・被支配の関係が色濃く表現されていました。
それでも生活していく中では出身国の区別がなくなりつつあるのに、どこかに明確な違いが残ってました。
その一つが飛鹿の乳を飲む習慣でした。生活の中で見たら些細な違いなのに黒狼熱に対しては大きな違いな習慣です。
それにしても病を武器にしたというのは恐ろしいですね。
新型コロナウイルスも変化しているように、大勢が罹患すると病の性質は変化するかもしれないので黒狼熱を武器にしたのは諸刃の剣です。
実際、ホッサルがそのように指摘していました。
それでも行動を起こしたのはなぜなのか?
国のためとは何なのか?民のためではないのか?考えさせられます。
火馬の民を切って捨てるのは国のため?民のことはどう考えてる?
そんな問いを投げかけたくなる為政者の姿がありありと描かれていました。
ヴァンとユナ
出だしから原作とは少し違う内容でしたが、これはこれでいいと思いました。
原作はもっと悲惨さが色濃いんですよね。それがまたリアリティを増していて作品の魅力の一つになっていると思いますが。
それはそれとして、冒頭のユナがお母さんを探すシーンで息子氏を思い出してしまう…泣いてないといいなと思いながらそのシーンを観ていました。
黒狼熱の後遺症?とか山犬に引っ張られたり統率したりする力の表現は神秘的でした。
山犬を統率する力は、誰が力を発揮しているか区別がつくように色が変えられていたのも分かりやすかったです。
それにしてもユナがかわいい!
「いつ帰ってくるの?」を「ただいまはいつ?」と聞いてるのがよかったです。あのシーンは泣きそうになりました。
ヴァンとユナが互いを想い合い、信頼する姿が本当の親子のようでした。
ホッサル
オタワルの、ホッサルの微妙な立場とかおじい様の存在の大きさとか省かれてる…と衝撃を受けました。
原作では東乎瑠の宗教的医術との対立やホッサルがどの程度の医学的知識を持っているかより詳しく描かれています。
ホッサルは最先端の知識や技術を持っている医者なのです。
ヴァンと共に旅をしたのも驚きでした。そのおかげで解決まで時間短縮でしたね。
え、ホッサルがヴァンと旅するの?
でもそのせいでマコウカンの活躍の場が減ってましたね。原作ではマコウカンの頑張りがあるのでぜひとも読んでほしいです(笑)
一緒に旅をしたサエは孤高の人という感じでかっこよかったです。
原作ではもう少し物腰の柔らかい印象でした。
原作ではサエの人生についても語られているので、興味のある方はぜひ読んでください!
考察
「約束の旅」という副題が何を指すのか
「『ユナ』と約束の旅」だと思ってたけど「『ユナと約束』の旅」なのでしょうか?
約束は鹿笛を作ること?
そう考えればユナとの約束を旅の間に果たしてますよね。
「ただいまする」のが約束だったらよかったのですが、そうはなりませんでした…。それが残念です。
ラストシーン
エンドロールのあとのシーンは震えた…大きな感動…。
最後のシーンはケノイが木と同化したようにヴァンが飛鹿と同化したと解釈しました。
飛鹿の角が欠けてる…欠け角のヴァンだ…!
きっと「鹿の王」となったのだと思います。
ユナがヴァンの作った鹿笛を吹いたことで姿を現したのも感動です。
一部『もののけ姫』と酷似しているという批判がある
原作を読むと全くそんな印象は受けません。
映像化した時の表現がそう思わせているのでしょうか。
監督が『もののけ姫』の製作にも携わった方だというのが影響しているのかもしれません。
余談
産後初の映画館!旦那に息子を見てもらい、1人で映画を観に行ってきました!
旦那が息子と2人で1時間以上過ごすのは初のことでした。
まさかの息子は2時間半くらい寝て過ごし、特に子守することもなかったそう…(笑)
育児に関して当事者意識を持ってもらうよい機会だったのですが…残念です。
以下、2021.07.06記載
上橋菜穂子原作の『鹿の王』が映画化!
小学生の頃から上橋菜穂子さんの大ファンです!
その上橋菜穂子さんの作品、『鹿の王』がアニメ映画となることになりました!
とても面白いおすすめの作品なので今からどんな映画になるのかとても楽しみです。
『鹿の王』とは
『精霊の守り人』や『獣の奏者』の作者として知られる上橋菜穂子さんが書いたファンタジー小説で、2015年に本屋大賞第一位にも選ばれた人気の作品です。
2014年に出版された単行本では『生き残った者』と『還って行く者』があり、その続編の『水底の橋』が2019年に出版され3部作になっています。
2017年には角川文庫、2018年には児童向けの角川つばさ文庫から文庫本が出版されているようです。
この記事の最後に単行本のあらすじを記載します。
上橋菜穂子さんの作品に共通することなのですが、読み始めると一気に物語の世界へ引き込まれ時間も忘れて読みふけってしまいました。
主人公たちの心情表現はもちろん、架空の世界にある文化も丁寧に描かれているので実際にその世界を訪れているような、その世界の風景を見ているような感覚に陥ります。
この作品は架空の世界で謎の病気が蔓延し、その治療法を模索し続ける医者とその病気の抗体を持つ男を中心に物語が描かれています。
続編では医者が主人公となり物語が進んでいきます。
奇しくも謎の病気に立ち向かう人々を中心に物語が進むというのは、コロナ禍の今日に相通じるものがあります。
題名にもなっている「鹿の王」とは何を指すのか、なぜ病は蔓延したのか、なぜ抗体を持つ者がいるのか、すべての謎が解けたときの爽快感、そして読後の疾走感をぜひ味わってください。
このファンタジー作品を通して発せられているメッセージがあり、きっと感じること、考えることがあると思います。
映画化!
これはもうファンとしては本当にうれしいニュースです!
公開は2021年9月10日(金)とのこと。これはなんとかして公開日に映画館へ足を運びたい!
監督や制作陣は豪華な顔ぶれです。この作品の独特で圧倒的なスケールで描かれている世界観がどう表現されるのかとても楽しみです。
おそらく戦闘シーンも多くあるでしょうし、迫力のある映像を期待したいです。
そして声優として、戦士ヴァンを堤真一さん、医師ホッサルを竹内涼真さん、ヴァンを追う謎の戦士サエを杏さんがそれぞれ演じます。声優陣も豪華ですね。
特に主人公の一人であるヴァンが堤真一さんというのはイメージにぴったりです。寡黙な男の発する言葉の重みが存分に表現されるのではと期待が高まります。
何をどこまで描くのか、それも気になるところです。原作のボリュームを映画にするのは難しいでしょうし。
副題の「ユナと約束の旅」というのが何を意味しているのか、見てからのお楽しみですね。
個人的にはトマとその従兄弟たちの成長が描かれているといいなと思います。あの子たちのおかげでヴァンは救われるんです。それを描いてほしい。
原作あらすじ
その他の上橋菜穂子作品
上橋菜穂子作品の一部を紹介します。
まとめ
上橋菜穂子さんの作品はどれもわくわくさせてくれるファンタジー小説です。
世界観は独特と言いつつも、実際に存在している文化に類似していることがあるのでリアルに感じられます。
エッセイ『物語ること、生きること』ではどのようにして物語が生まれるのか、小説を書くようになった頃の話などが掲載されていて興味深いです。上橋菜穂子という人物にもとても魅力があるのだと思いました。
興味のある方はぜひ物語だけでなく、作者にも触れてみてください。
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